白檀の王様は双葉に芳しさを気付かせたい

「今日は、琥白さんもお元気がなかったようです」

 神尾さんのその言葉に、胸がちくりと痛む。
 するとそんな私の気配を感じたのか、神尾さんは飄々と言葉を紡ぐ。

「ふたばさんまで、どうしてそんなに浮かない顔をされているんです? もしかして、以前、無理矢理に車の中でキスされて、愛想が尽きました?」

「ぶっ……! な、なんでそのこと……!」

(そういえばそんなこともあったーーーー!)

 考えてみれば、自分からキスをして以来、琥白さんは当たり前のように何度もキスをしてくるようになっていた。
 愛華さんを送った後、車の中で無理矢理みたいにキスされたんだ……。結局、自分もそれに応えていたけど……。

 その時のことを思い出すと、顔がカッと熱くなる。

 神尾さんは楽しそうに笑ったあと、「琥白さんがそんな行動をとられるくらい『人間』らしい一面をお持ちだったと知れて、私は嬉しかったですよ」

 また楽しそうに笑う神尾さんの声に、私は顔が赤くなるのを隠すように、頬を両手で覆った。
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