白檀の王様は双葉に芳しさを気付かせたい
やけに顔が熱くなるので、車のウィンドウを開けさせてもらう。
外の風が涼しい……。
そもそもなんで私がいちいちこんな気持ちにならなければならないのか……。
入籍まであと一週間と迫っている今、こんなことをやっている場合じゃないのに……。
そんなことを考えていると、外を歩く人たちの中に、ある男性を見つける。
私は慌てて叫んでいた。
「止めてください!」
「どうされました?」
「……探していた人を見かけて。ここで下ろしてください、きちんと自分で帰りますから」
じっと神尾さんを見て頭を下げると、神尾さんは少し考えて、息を吐いた。
「わかりました。ただし、何かあれば必ず連絡してください」
そう言って、神尾さんは私に自分の名刺を渡す。
私はそれを受け取ると、頭を下げて、止まった車から外に出た。