白檀の王様は双葉に芳しさを気付かせたい

「ふたばの立場は少なからずわかってるつもりだし、父親のことだって知ってる。社長の思惑通りに動く気持ちも、男性不信になっているのも理解できる。でも、そんな奴らと俺を一緒にしないでくれ。まだ分からないか? 俺はふたばのことだけが……」


(……きっと今が最後のチャンスだ)

 私は琥白さんの言葉を遮るように言った。

「『わかってる』『理解できる』って……そんなのっ!」

 私は息をすってもう一度口を開く。「これまで全部順調だった琥白さんなんかにわかるはずないじゃないですか!」


 そのまま琥白さんの手を振り解こうとしたけど、その手は振り解けなかった。
 それは痛いくらいの力で……琥白さんが怒っていることがわかる。

「お前がっ、ふたばが、こうしたいってことがあればそれができるような度量のある男にはなりたいって思ってやってきただけだろ」
「なにそれ、そんなこと頼んでないし!」
「そうだよ、俺が自分勝手にそうしてた。ふたばにもう一度昔みたいに笑ってほしくて。それの何が悪い」

「だから、私の事なんて、琥白さんには関係ないでしょ……っ!」

 私が叫ぶと、琥白さんは私の顔の横の壁に、ダンッと手をついた。
 驚いて言葉に詰まると、琥白さんは真剣な顔で私を見ている。

 そのまま琥白さんの顔が近づいてきて、私は思わず琥白さんを強く押すと、よろけた琥白さんの隙を縫って走り出した。
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