白檀の王様は双葉に芳しさを気付かせたい

 琥白さんのその言葉に唇をかむ。

「それは……手に入らないものに一生懸命なだけでしょう」
「違う」
「じゃ、じゃあ、いじめっ子精神がまだあるだけじゃないですか」

 昔、私をいじめて、無茶振りして泣かせたみたいに。
 琥白さんは息を吐いて、そのまま言葉を紡いだ。

「小さなころから知ってる、ただの親友の妹、ってだけだったよ。最初は……」

 琥白さんは言う。最初は、と言う言葉に私は息をのんだ。
 今は? と聞きたくなって、なんとか口を噤むと、琥白さんは苦笑する。

「いや、むしろ……苦手だったかもな。弱くて、ビービー泣いてたし」

 私は自分で言うのもなんだけど、確かに小さな頃は泣き虫だった。

「……そ、それはそうですけど、それと何の関係が」
「後継者として生まれたくせに、覚悟もできず、いちいち人の言葉に傷ついて、弱くて……そんなふたばが……どちらかと言うと嫌いだった」

 あの頃の琥白さんは、すでに後継者としての『覚悟』ができてたと思う。
 なんでも、当たり前みたいにこなして、それが揺らぐことはなかった。

「私のこと嫌いだったから、昔も、あんな無茶振りばっかりしたんですか」
「まぁ、若かったし、そんな奴に、どう接していいかわからなかったしな」

 琥白さんはそう言って、それから私に目線を合わせた。「でも……このままじゃ、どこかでつぶれる。そう思ってた。潰れるなら早く潰れた方がいいって思ってたんだ」


 そう言って琥白さんは少しして、何かを思い出したように微笑む。

「でも、案外、ふたばは強くてさ。泣きながら唇噛んでふんばって練習して、結局金賞取ってきた」

 するりと暖かな手が私の頬を包み込む。
 琥白さんが懐かしそうに目を細めて、私はその顔を見て、胸がぎゅうと締め付けられた。

「あの時の、ふたばの嬉しそうな笑顔、今でもよく覚えてるよ」

< 160 / 232 >

この作品をシェア

pagetop