白檀の王様は双葉に芳しさを気付かせたい

 そんなことを考えて仕事をしていると、すぐに午前は過ぎていた。
 お昼を買いに外に出ると、突然肩を叩かれる。

 驚いて振り返ると、相変わらず人懐こい笑みを浮かべて、工藤さんがそこに立っていた。

「工藤さん?」
「お会いできてよかったです」
「……え?」

(会いたかったってこと? なんで?)

 私が首を傾げると、工藤さんは
「この前、少し悩まれている様子だったのが気になってて」と言う。


 私は微笑むと、

「あ、大丈夫です。今は、兄にどう伝えようかなって悩んでたくらいで」
「お兄さんに?」

 少し驚いたように工藤さんは言う。
 私が頷くと、工藤さんは、そうですか、と呟いた。
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