白檀の王様は双葉に芳しさを気付かせたい

 琥白さんは唇を離すと、私の目をじっと見る。
 その目がやけに真剣で、目が離せなくなった。

「もう一度しても、いいですか?」
「……」

「答えないなら、遠慮なく、もう一度しますよ」

 私が答えられないままでいると、もう一度唇が重なる。
 それはこれまでのどのキスより優しいキスだった。


 私はそっと目を瞑り、きっとこのキスのあと、琥白さんが見ていなくても唇を拭ったりしないだろうな、なんて考えていた。

 勝手に同棲までさせられて、腹のうちが読みづらくて、腹の立つ発言も多い相手なのに……。
 なぜか、消したくないと思ったはじめてのキスだった。


―――飛行機の中でずっと手を握っていたら、その相手に情でも湧くのだろうか?
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