Extra Fight集 〜年下上司が、地味な私への溺愛を隠してくれません〜
ランドでランチといえば、ハンバーガーやピザなどのファストフードを選ぶ若者が多い。
実際、前の時は未来エリアのフードコートっぽい場所を選んだ。
……その時奴は、私に籍を探させている間に、自分の食事だけを先に買ってきて、なおかつ私が買ってきている間に自分の食事は終わらせた挙句

「ねえ、まだ食べ終わらないの?暇なんだけど」

と文句を言ってきたので、イラッとしたことはよく覚えている。
その時は笑顔で

「スマホのゲームでもしてれば?」

と言ったのだが、これがまずかったのだろう。
並んでいる間、奴はスマホゲームばかりして、私との対話は一切しなくなった。
そして私も、初デートということもあり、何を話していいか迷い、スマホで情報ばかり検索してしまった。
結果、面白くない判定をされて、とっととおさらばされた、というのが真相。
さらに次の日、奴にこのデートのことを面白おかしく友人たちに吹聴され、しばらく噂になったというのも相まって、このランドデートは私の黒歴史になったわけだが……。

さすがに、加藤さんとこの黒歴史は関係ない。
そう思ったので、暗い過去を払拭する意味でも、加藤さんとのランチ場所の候補に突っ込んだ。
未来エリアのフードコートは目の前に人気のコースターアトラクションもあるので、遊ぶ導線としては悪くない、とも聞いていた。
もちろん他にもおとぎエリアのピザ屋に西部エリアのカレー屋、密林エリアの中華料理も念のために候補に入れておいたわけだが。


ところが。

「加藤さん、ランチですがこことかどうです?」

私が入口でもらったランド地図を見ながら、候補に入れた数カ所を加藤さんに見せながら一つ一つの良さを説明しようとした時だった。
いきなり加藤さんは私の手を掴み

「こっち」

と密林エリアに向けて引っ張った。
中華料理の店につながる道とは違う道。

「加藤さん、そっちは……」

待ち時間は比較的短め。
ランドに入って最初、もしくは最後に選ぶアトラクションとしてメジャーな海賊のアトラクションがある場所。
そしてその場所でセットで存在してるのが……。

「え、ちょ!?ここですか?」

私の話をわざとスルーしているのか

「こんにちはー」
「空いてます?」
「15分ほど待ち時間ありますけどいいですか?」
「大丈夫です」

可愛いワンピース姿のコスチュームの案内係のお姉さんとさっさと話をつけた加藤さんは、私を連れて中へと入ってしまった。
ランドで1位2位を争うとも言われる、アトラクション併設の……お値段が高いオシャレなレストランに。
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