一夜では終われない~ホテル王は愛しい君を娶りたい~
 年上だろうか、落ち着きのある雰囲気を醸し出した彼は非常に顔立ちが整っていた。この大学には雑誌のモデルや舞台俳優がいると聞いていたから、もしかしたらその類の人かもしれない。

 これまで恋愛を積極的に考えなかった私でも、さすがに胸が騒いだ。

「どうぞ」

 彼は短く言うと、私の方へ半分だけプリントを差し出した。一枚の紙を分け合うように見る相手がこんなに素敵な人だなんて、後で友人たちに話したら羨ましがられるかもしれない。彼女たちは早く大学で恋人を作りたがっているのだから。

「――橘さん。橘深冬さんはいますか?」

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