一夜では終われない~ホテル王は愛しい君を娶りたい~
 しっとりとした木造の建物はよく手入れされているが、だからといって旅館のすべてが昔のままというわけではない。バリアフリーの整った玄関や広い廊下は気が遠くなるほどの年月の間に何度も改装された結果だそうだ。

 訪れるお客様ひとりひとりに寄り添う温かな憩いの場所。それが旅館たちばなだ。

「遠いのにはるばるようこそ。深冬さん、杏香さん」

 私たちの前に、子供を抱いた着物の女性が現れる。

 その隣には以前会った智秋さんが、やはり着物に身を包んで立っていた。

「東京からわざわざご苦労様。かわいい妻の咲良(さくら)と、同じくらいかわいい娘の楓花(ふうか)だよ」

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