一夜では終われない~ホテル王は愛しい君を娶りたい~
 声が聞こえて振り返ると、眠気を顔に残した深冬が立っていた。

 彼は私の姿を見てなぜかほっとしたように息を吐く。

「いなくなったのかと思った」

「まさか。早く起きちゃったから考えごとをしてたの」

 てっきり向かい側の椅子に座るかと思いきや、深冬は私の椅子の側に腰を下ろした。

 それでは床が冷たいだろうと立ち上がりかけるも、その前に彼が私の手を握って自身の額を押し付ける。

「ひとりで目覚めるのはつらいな」

 彼がなにを思ってぽつりと言ったのかわかった気がして胸が痛くなる。

「……でしょ? どうして私がもう一度恋をしたくないかわかってくれた?」

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