一夜では終われない~ホテル王は愛しい君を娶りたい~
 茶化さないとやっていられないくらい、私の手にすがる深冬は弱々しい。

「もう二度とお前にこんな朝を迎えさせない」

 指先に温かな唇が触れた。

「ひとりにしないと約束するから、お前も俺をひとりにするな」

「……うん」

 半年後に別れるつもりならうなずくべきではなかったが、首を横に振る選択はなかった。

 私はひとりになりたくないから深冬を拒む。

 だが、それは彼に取り残される悲しさを押し付けるということではないのか。

「一緒に二度寝する?」

「そうだな。まだ起きるには早い」

 深冬とふたりでまだぬくもりを残す布団に潜り込み、私から彼を抱き締めて広い胸に顔を埋める。

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