一夜では終われない~ホテル王は愛しい君を娶りたい~
「迎えに行ったら杏香はもう帰ったと言われた。昼間にお前がいたという話を聞いてピンときたんだ。後はお前がいつもこちらへ来る時に行く店を探せばよかった」

「それでここを特定したと。いや、すごいね」

 肩をすくめた智秋さんが空虚な音を響かせて拍手をした。明らかに怒っている深冬に一歩も引かず、余裕のある態度を取り続けている。

「杏香となにをしていた」

「君と別れるように言っただけだよ」

 てっきりまた誤魔化すかと思いきや、智秋さんは素直に真実を告げた。

< 219 / 261 >

この作品をシェア

pagetop