一夜では終われない~ホテル王は愛しい君を娶りたい~
 個室のドアを壊す勢いで開いた深冬が、息を切らして私の名を呼ぶ。

 そして彼は私の姿を見つけると、心からほっとしたように深く息を吐いた。

「大丈夫か? なにもされていないな?」

「う、うん。でもどうしてここに……?」

 深冬は私の質問に答えず、実の兄へ顔を向ける。

「どういうつもりだ、智秋」

「義理の妹とちょっと仲良くなろうかと」

「嘘をつくな」

 深冬は私を守るように抱き締め、きつく智秋さんを睨みつけた。

「よくここがわかったね。誰にも言ってないはずなんだけどな。杏香ちゃんにも深冬には教えないでって言ったし」

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