一夜では終われない~ホテル王は愛しい君を娶りたい~
 なにもかも奪われそうになって口を閉ざそうとすると、深冬は私の顎に指をあてがって舌を差し出すよう促した。

 キスの気持ちよさを教えてくれたのも、思い出させてくれたのも彼だ。

「ん……っは」

 狭い車内に乱れた呼吸が交じり、冷たいはずの空気に火を灯していく。

 来月までおあずけなんて信じられない。今すぐにでも彼が欲しい。朝まで求められて、なにもかも差し出したい。

「今日は眠れるかな。こんなキスされたら、私……」

「だったらここでやめて帰るか?」

「……ううん、もうちょっとだけしたい」

「よかった。帰ると言われても続けるつもりだったからな」

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