一夜では終われない~ホテル王は愛しい君を娶りたい~
 彼は今のうちから私の熱を煽るように耳のふちを甘噛みした。

 吐息が触れ、はしたないほどの欲求が自分の中に芽生える。

「うん、楽しみにしてる。……優しくしてね」

「あまり自信がないな。抱き潰しそうだ」

 こんなやり取りを過去にもした気がするが、もうどうでもよかった。

 まだ車を動かそうとしない深冬の首に腕を回し、彼の唇をついばんでからそっと舌を差し入れる。

 すぐに私のものとは違う体温が唇を割って侵入してきた。口づけの合間に濡れた音を響かせて、震えるほど心地いいキスに溺れる。

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