一夜では終われない~ホテル王は愛しい君を娶りたい~
 呼吸さえ忘れた私と、側にいた秘書らしき男性になにかを話しかけて顔を上げた彼と、まったく意図せず目が合った。

 時間が止まり、周囲の音がまったく聞こえなくなる。

 きっと彼もそうだと思ったのは、私の姿を捉えた瞳がはっきりと驚きを浮かべたからだ。

 コンシェルジュデスクからホテルの入口まで多少距離があるというのに、どうしてこんなにも彼の表情の些細な変化に気付いてしまうのだろう。

 思考さえ止まった私の時間を動かしたのは、かつんという大理石を踏む足音。

 深冬が、彼が私のもとに近付いてくる。

「久し振りだな」

 コンシェルジュデスクの前に立った彼が開口一番に言ったのがそれだった。

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