一夜では終われない~ホテル王は愛しい君を娶りたい~
「……どなたかとお間違えでしょうか?」

 心の動揺を悟られまいと慣れた笑顔を作って答える。

 一国の王が来ようと感情を顔に出さず接客するのが私たちコンシェルジュだ。相手が一生恋愛ができなくなる呪いをかけた張本人であっても表には出さない。

 深冬は私を見つめたまま是とも否とも言わなかった。

 ただ、なにかを堪えるような狂おしい光を瞳に宿し、眉根を寄せて唇を引き結ぶ。

「そうか」

 短いひと言にどんな感情が込められているのか読み取れないが、今の答えを嘘だと見抜いた上で私に合わせて引いてくれるのだろうと思った。

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