一夜では終われない~ホテル王は愛しい君を娶りたい~
「六時五十分から待っていた」

 その時間はちょうど観光客のグループが複数到着し、ロビーに大勢の人が密集していた。

 チェックインを待つ人々はコンシェルジュデスクにも押しかけ、明日の観光場所について説明を求めたり、おすすめのレストランはどこかと私ともうひとりのコンシェルジュを質問責めにしたりした。

 だから彼の姿に気付かなかったのか。もっとも気付いていたとしてもどう反応すればいいかわからなかったに違いないが。

「部屋に来いと言うなら待っている必要はなかったのでは」

「逃げられる前に迎えに来た方がよさそうだったからな」

 まさに逃げるつもりだった私はぐっと言葉を詰まらせてうつむいた。
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