一夜では終われない~ホテル王は愛しい君を娶りたい~
 どこか切なく焦がれるような眼差しに囚われたら、もう他人の振りをすることはできないのだと諦めるしかなかった。

「……ずいぶん立派になったんだね。十年前はたちばなの御曹司なんて教えてくれなかったから驚いたよ」

 線を引くための敬語はやめ、十年前のように話しかける。

「ホテルはあなたのお父さんがもともと経営していたらしいね。まだ引き継いで数年しか経ってないのに、業界ではかなり評価されてるんだって? 〝若きホテル王〟なんて書かれてる記事を見たよ。旅館の方はお兄さんが継いだのも知ってる」

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