一夜では終われない~ホテル王は愛しい君を娶りたい~
「お前がいるのを知ってすぐに履歴書と経歴を確認した。名前も年齢も誕生日も、大学名もすべて俺の知っている阿澄杏香のものだ」

 アモラリアスイートのある三十階まで、エレベーターが私たちを運んでいく。私の気持ちは地上に置き去りにされたままだ。

「お前は十年前、俺と恋人だった杏香だ。違うとは言わせない」

「……違います」

「俺がお前を間違えると思うのか?」

 狭い密室の中で空気が揺れたかと思った瞬間、顔の真横に深冬の手があった。

 私を追い詰めるように迫った彼と、近すぎる距離で視線が絡み合う。

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