一夜では終われない~ホテル王は愛しい君を娶りたい~
 咄嗟に深冬の肩を押しのけて首を左右に振った。

「私はもう二十九になったの。大学生の時とは違う」

 お願いだから大人になって気持ちが変わったのだと思ってほしかった。

 そうすれば私は彼と二度目の恋愛をせずに済む。

 恋が始まらなければ、終わりだって来ないのだ。

「あの頃に戻りたいとは言っていない。もう一度お前の隣を歩きたいだけだ」

「あなたは私がどれだけ変わったか知らないから」

「知っていたら俺の気持ちが変わるとでも? だとしたら、お前の方こそ俺をわかっていないな」

 深冬は無理に私を押さえ付けようとせず、少し乱れた髪を優しく手でなでると、瞳に強い意思を宿して言う。

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