片恋
キッと睨みつけたはずなのに、延藤くんはますます口元に笑みを作る。


「守るよ。そこは、信用してくれていい。伊月の正体は、誰にも言わない」

「……」


嘘か本当か、読めない。

信用?
そんなの、出来るような要素を感じない。


「信じられないなら、真桜ちゃんが俺のそばで見張るしかないね?」


本当に、分からない。


「……私、帰るから」

「わかった。バイバイ」


今度は、意外にもあっさりと解放してくれた延藤くんに再び背を向けて、歩き出す。


「簡単に別れてなんか、あげないけどね」


延藤くんが、私の背中を見つめながら、そんなことを呟いていたとも知らずに。
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