片恋
だけど、それにはひとつ、問題がある。


延藤くんと別れるということは、伊月くんのことを口止めする理由がなくなるということ。

だから私は、自分から延藤くんに別れを告げることは出来ない。

本当は今だって、私を守るために、伊月くん自身が自分がナデシコだとバラしてしまわないか、心配に思っているのに。


「真桜、一応確認していい?」

「え? うん、なに?」

「真桜は本当に、延藤のこと好きになったりしてない?」


延藤くんに対しては、以前のような嫌悪感はない。

優しいし、私にも笑顔を見せてくれるし、……「好きになった」とまで言ってくれた。

でもそれは、私の気持ちは、恋じゃない。


「うん、私が好きなのは、延藤くんじゃないよ」
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