片恋
「“君は僕を知ってる 君は僕を知らない”」


伊月くんをナデシコだと知らずに、ナデシコへの想いを語っていた頃が、なんだか懐かしい。


「“僕だけのものにしたい 許されない だけど 君がうなずいてくれるなら”」


せっかく堪えた涙が、伊月くんの歌声であふれてしまう。


「“片耳分けたイヤホン 気づけばいつもそばにいる 甘い罠にかけたのは 落ちたのは ふたりで”」


これはきっと、私の……私たちの歌。


「“気づけばいつも 隣にある恋”」


手の甲で、涙を拭う。


「“僕の恋が 君の恋になりますように”」
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