片恋
「あ、チャイムだ。じゃあ、真桜、また後で」

「うっ、うん。またね」


伊月くんが、自分の席へ向かう。

なんだか、変にドキドキしてしまった。


「噂通り、真桜ちゃんの彼氏、クールだね」

延藤くんが、苦笑いをするように息を吐く。


「いえ、彼氏じゃ……。……噂?」

「うん、噂。伊月って、めっちゃイケメンじゃん。俺、去年クラスは違ったけど、同じクラスだった女子が、よく騒いでたからさ。『話したいけど、怖そうで無理』って」

「そ、そうだったんだ……」


伊月くんは、確かに去年もクラスの女子に、遠巻きに見られていた。

近くにいた私に嫉妬した女子に、囲まれるほどには。

だけどまさか、他クラスの女子にまで人気だったなんて。
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