片恋

「延藤くん、ちょっと時間貰えないかな?」


チャイムが鳴って、休み時間になり、延藤くんが席を立つ前に、隣から手を伸ばす。

延藤くんは、不思議そうに目をパチパチさせている。


「真桜、あのさ……。……あ」


そのタイミングでこちらにやってきた伊月くんは、延藤くんの腕をつかむ私の手を見て、ピタッと止まった。


「あ、ごめんね、伊月くん。私、ちょっと延藤くんに用があって……」


その言葉を聞いて、それまで目をパチパチさせていた延藤くんは、急に立ち上がり、


「もー、しょうがないな、真桜ちゃんは。授業中も、ずっと俺の顔ばっかり見てるんだから。そんなにふたりきりになりたかったの?」

「は、はい!?」


延藤くんは、逆に私の腕をつかみ返し、そのまま手を引いた。
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