エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
手折られる
都会の広い道路を走り出して二十分ほどすると、タクシーはいかにも高級なマンションが建ち並ぶ閑静な住宅街に入った。
瀬名さんの指示でタクシーが停車したのは、その中でも一際天高く聳えるタワーマンションの前。
先に降りた私は、そのとんでもないゴージャスさに度肝を抜かれ、ポカンと口を開けて仰ぎ見た。


これはどう見ても、単身者用の賃貸マンションではない。
勝手に独身だと思ってたけど、このマンションを見る限りひとり暮らしではないだろう。
そうなると、十中八九既婚者だ。


この時間、奥様はご在宅だろうか。
なんて自己紹介すればいいんだろう。
素直に瀬名さんが指揮する事件に巻き込まれた一般人と、名乗ってしまっていいんだろうか。


そこまで考えて、私ははたと思い至った。
って言うか……瀬名さん、奥様がいるのに、私にキスしたの!?


〝恋人とデートのフリ〟すらできなかった私に呆れ果てての行為で、当然深い意味はないだろうけど、それにしたって。
大事な奥様がいるのに他の女性にキスして、その後すぐに堂々と家に連れて来るなんて、尋常じゃない!
今さらの動揺と共に、心臓がバクバクし始めた。


それに、それに……改めて思い出すまでもなく、私、ファーストキスだったんだけど!?
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