身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む~政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚~
社交的な姉と引っ込み思案な妹、ふたりは対照的だ。

椿にとって仁だけでなく、その隣に並ぶ菖蒲も憧れの対象なのである。

色素が薄く儚げに見えるさらさらのストレートヘアーも、大人びた艶っぽい顔立ちも、菖蒲はすべてが麗しい。

反対に椿の髪は黒々としていて、顔立ちも子どもっぽく、『かわいらしい』ならまだしも『美しい』とは言い難い。

「お姉ちゃんが今着ている薄藤色の付け下げもよく似合ってるよ」

薄藤色は気品と優雅さを連想させる。

やはり菖蒲にぴったりだ、自分には似合わないと余計卑屈な気持ちになる椿だ。自分も菖蒲のような、白や紫が似合う女性になりたかったのに、と。

すると、そんな椿の気持ちを察したのか、仁がにっこりと微笑んだ。

「椿ちゃんには、桃色がよく似合うよ」

もしかして、先日みなせ屋の店内で会ったときに桃色の小紋を着ていたことを覚えていてくれたのだろうか。

その気遣いにきゅんときて、椿は胸の前で手を握り込む。

「ちょっと仁! 妹をあんまり調子づかせないでよ。桃色なんて女の子なら誰でも似合うようにできてるんだからね」

慌てて菖蒲が間に入ってきて仁を小突いた。
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