身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む~政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚~
菖蒲は「ほら。まだちょっと薄いけど我慢して」と温かい麦茶の入った湯呑みを差し出した。

粒を浸す時間が短かったために見た目は薄いが、味はきちんと出ていた。出来立てで風味豊かでとてもおいしい。

菖蒲はやかんを火のついていないコンロに置き、粗熱を取る。

「長女だからっていろいろ押し付けられて生きてきた。好き勝手やって楽しそうにしてるあんたが羨ましかったのよ。まぁ、あんたはあんたで、こんな姉がいて大変だったんだろうけど」

椿はまだ熱々の麦茶にちびちびと口をつけながら首を傾げる。

「私は自慢のお姉ちゃんがいて幸せだったけど」

素直に答えたつもりだったのだが、菖蒲は「そういうとこよ」とげんなりした。

「お姉ちゃんと仁さんのことも、素敵な恋人同士だなって思ってた」

「でしょうね。あんたの前でわざとイチャついてたもの」

「わざと? どうして?」

「嫌がらせに決まってるじゃない。あんたが仁のこと好きなのは、見え見えだったから」

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