身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む~政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚~
父のわななく声に、椿は異変を感じ取る。

「どういう意味?」

よくよくテレビを見ていると、ちょうど週刊誌の記事が紹介されるところだった。

男女が車に乗り込む写真、そして、車中の男女がキスをしている写真をアナウンサーとコメンテーターが解説している。

『これは明日発売の週刊文冬が報じているスクープです。清純派女優、砂羽秋乃さんに初の熱愛スクープ!』

『お相手は京蕗不動産代表取締役の京蕗仁さんということで! 芸能リポーターの井下さん、この京蕗さんというのは――』

『はい、会社経営だけでなく、投資家としても非常に影響力のある人物ですね。なにしろご実家がとんでもない資産家で、平たく言えば世界に名を轟かせるセレブ一家といったところでしょうか。業界では〝財界の若き帝王〟とまで呼ばれていて――』

『つまり砂羽さんは玉の輿というわけですね! では今後、結婚の報告もあるのでしょうか?』

『ええ、砂羽さんの事務所はプライベートなことは本人に任せていますと回答していて、否定はしていないんですよ。ですから、結婚の可能性も充分にあると考えられますよ~!』

テレビから仁の名前を聞くとは思わなくて、ポカンと口を開けてしまった。

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