身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む~政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚~
報道陣たちの執拗な、そして不躾な質問に、椿は身を強張らせながら「やめてください!」と叫ぶ。

しかし、当然ながらやめてと言って聞いてくれるような人たちではない。彼らもそれが仕事なのだから仕方がない。

強引に逃げようとしたとき、誰かの足に草履を引っかけて体勢を崩した。

体がグラついた瞬間、草履の鼻緒がぶちんと切れる。

……しまった!と椿は蒼白になるが、報道陣は変わらず追及してくる。

「京蕗さんと会ったんですか!? なんとおっしゃっていましたか!?」

「京蕗さんが砂羽秋乃さんと関係を持つのと、婚約が白紙に戻るのは、どちらが先だったんでしょう!?」

リポーターはすでに菖蒲の存在を知っているらしい。それでいて、椿のことだと勘違いしているようだ。

「お答えすることはありません!」

椿が強く叫んだとき。

地下駐車場の出口から黒い高級車が勢いよく飛び出してきて、真横に停まった。

運転席から出てきたのは仁だ。チャンスとばかりにマイクを向けるリポーター。

しかし、仁はかまわず報道陣の真ん中に踏み込んできて「彼女を離してください」と椿の肩を守るように抱き寄せた。

足を動かせずにいた椿は、仁の胸元に倒れかかる。

仁は椿の目線を辿って草履の鼻緒が切れていることに気づき、取り囲む報道陣をギロリと睨んだ。
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