過保護な次期社長の甘い罠〜はじめてを、奪われました〜

はじめての夜、はじめての朝

お店を出た後も大我は私の手を引いてずんずん歩いて行く。

温かい室温に慣れていた身体が、ぴゅうっと吹いた風にぶるっと身震いをした。

袖を通さず羽織ったままのパイピングコートの前見頃を、大我に掴まれていない方の手でさらに強く握る。

「たっ、大我……っ!」

聞きたいことがいっぱいあるのに、大我は全然止まってくれる気配がない。

これじゃまるであのクラス会の日と一緒だ。

困惑しながらも引かれるがままについて行くしかない私だったけれど、大我がようやく立ち止まったのは人気のない裏路地で。

振り返った彼は私をキツく抱き締めた。

「……お前、本当にあいつに何もされてないか?」

心配を露わにした声でそう問われれば、胸がきゅうっと締め付けられる。

「さっ、されてません……」

「本当だな?」

「本当ですっ」

「……はぁぁぁぁっ……。お前が車で連れて行かれた時はマジで焦った。いつの間に竜と2人で飯行く仲になってんの……。しかも個室だし、キスされそうになってるし……。勘弁して、寿命縮んだわ……」

心底安堵したようなため息を漏らした後、珍しく余裕のない声で呟く。

あの時目があった気がしたのは気のせいなんかじゃなかったんだ。
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