過保護な次期社長の甘い罠〜はじめてを、奪われました〜

はじめての、出会い

私の地元は京都の中央北寄りに位置する、豊かな田園都市だ。

春には水仙の咲く丘があったり、夏には蛍が出現する川があったり、とにかくいつも身近に自然が溢れているような、そんなところ。


「としくん、かえしてようー……」

あれは私が小学3年生の時。

2年生の時も同じクラスだったとしくんは、私のことをよくちびだの泣き虫だの揶揄ってきたり、私の持ち物にいたずらしたりしてくる典型的ないじめっ子だった。

その日も学校からの帰り道、としくんに給食袋を取られた私は泣きながら彼を追いかけていた。

返してと訴えてもやーだよ、と跳ね除けられ、追いかけて手を伸ばしてもひらりと躱され、もうどうしていいか分からずただただしくしく泣くだけになってしまった私の所へたまたま通りかかったのが、当時高校1年生だった大我と、その友達の遥(ハルカ)くんだった。

やんちゃでガキ大将タイプの大我と、物腰の柔らかい王子様タイプの遥くん。

かっこよくてケンカが強くて女の子にモテる。

当時の2人は地元じゃちょっとした有名人で。

もちろん素行不良でという意味でだけれど。

だから小学生だった私たちでも彼らのことは知っていて。
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