過保護な次期社長の甘い罠〜はじめてを、奪われました〜

「羽衣」


すると、今まで聞いたことのないような甘い声で名前を呼ばれる。

その声に、ぞくりと背中に痺れが走った気がした。

「………っ、なっ、なんで今日、そんなに名前呼んでくるんですか………っ」

拘束されていた腕が解放され、代わりに顎を掴まれ上向かされる。

「……忘れたか?お前がちびじゃなくなったら名前で呼んでやるって言ったろ?」

そう言って無理やり合わされた瞳に浮かぶのは、危険な色香と少しの揶揄いの色。


………忘れる訳ない。大我の方こそ再会してからずっとちびすけって呼ぶから、あんな約束忘れたと思っていたのに………。


「覚えてます……っ!でも、昔も今もずっとちびすけのままで、全然名前呼んでくれなかったじゃ……っ」

最後までは言わせてもらえなかった。

だって、長いまつ毛が伏せられた端正な顔がゆらり近づいてきたと思ったら、あっという間に口を塞がれたから。

少し冷たくて、でもあったかくて柔らかい。

それが大我の唇だと理解した時には、頬を包んでいた大きな手のひらが後頭部に回り、私の唇は熱いものにこじ開けられた。その熱は奥深くまで侵入する。
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