過保護な次期社長の甘い罠〜はじめてを、奪われました〜

はじめての、デート

「……い、羽衣……」



自分を呼ぶ微かな声と、頭をゆっくり行き来する温もりを感じ、微睡の中からゆっくり意識を浮上させる。

重たい瞼をゆっくりと開ければ、ぼんやりと目の前に広がる端正なお顔。

寝起きのまだ正常に働かない頭でその人物を咄嗟に認識すれば、私はうわっ!と飛び起きた。

「起きたか、羽衣。もう8時だぞ?」

「……は、8時⁉︎遅刻……っ!」

「落ち着け。今日は土曜日だ」

あ、なんだ、土曜日か………って、

「た、大我っ、いつからそこにっ⁉︎」

壁際まで思いっきり飛び退き、掛け布団を下瞼の辺りまで引き上げて大我に問う。

「ついさっき、だけど?つーかお前、無防備な寝顔はちびすけの頃のまんまだな」

私の布団の傍らに片膝を立てて座り、くくっ、と面白そうに笑いながら、でも優しく目を細めて彼は言う。  


うんその感じ、絶対ついさっきじゃないですよね………!

「もうっ!なに勝手に入ってきてるんですか!」

「まあ、あんな深いキスした仲だし?」

「りっ、理由になってません!」

っていうか寝起きでその話、蒸し返さないでほしい……!
< 56 / 180 >

この作品をシェア

pagetop