むり、とまんない。


それって……。


キーンコーンカーンコーン。


「あ、チャイムなっちゃった」


そう言ったあーちゃんは、雑誌を片づけて席に戻っていく。


「あとは自分で考えなよ、胡桃。
遥くんのこと、自分のこと」


「あーちゃん……」


「自分に自信がないのは、わかる。でも、遥くんは芸能人の前に、胡桃の幼なじみなんだよ。そこんとこ、ちゃんと覚えといて」


「……あーちゃん」

「なに?」


「ありがとう」


するとあーちゃんは驚いたように目を見開いたけれど、すぐににこっと笑った。


「んーん、たまには頼ってよね!」


そしてあーちゃんは、またいつも通りのテンションで、「不知火くん!おはよう!」と席へ戻っていく。


「HRはじめるぞー。
席つけー」


それからすぐに先生が入ってきて、話し始めたけれど、隣の席に遥の姿はない。


今日も仕事、か……。


毎日毎日、仕事に授業に大変なのに。

昨日は私を心配して、買い物の荷物を持ってくれて、ご飯まで作ってくれて。


なのに私はまた、自分の身勝手で一方的な感情で突き放してしまった。


嫌われたかもしれない。

軽蔑されたかもしれない。


そんな気持ちが頭をよぎるのは確かだけれど。

遥にちゃんと、この秘密のことを話さないといけない。

こんな私を、好きだって言ってくれた遥、だから。


昨日はごめんね。

それと、いろいろありがとうって伝えたい。


ぎゅっと手を握って、うつむく。


遥は私に話しかけてきてくれた。

私と元の関係に戻ろうと頑張ってくれた。


だから、今度は。

今度は私から遥に歩み寄らなくちゃいけない。


どんな反応が返ってきても受け止めよう。


先生の話を聞きながら、強くそう思った。
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