むり、とまんない。


「いやー、楽しくなってきたねぇ、桃華さん」

「ほんとですよ、杏さん」


「ちょっと、ふたりとも!?」


私はこれからどうしたらいいのかを相談するために、ここに呼んだのに……!


親身どころか、めちゃくちゃテンション上がってて、ニヤニヤが抑えきれてないふたり。


「じゃあさ、これを機に遥と元の関係に戻ってみようよ!遥はそれ以上を求めてくると思うけど」

「うんうん!
まあ、幼なじみではいられないだろうね!」


それ以上?

幼なじみではいられない?

ふたりがなにを言ってるのかがわからない……。


「とーにーかーく!
胡桃は遥にかわいいって思われて、まあ若干……」


「え?」


「いや、かなり。引くぐらい重いと思うけど、いやではなかったんでしょ!?」

「えっ!?
あっ、う、うん……」


もちろん、いやではなかったよ。

びっくりした、だけで。


「ならかわいいって言わせとこうよ!
物理的にはなれてた距離もそうだけど、今いちばん遥の心に近い距離にいるのは胡桃じゃん。今まで知らなかった遥を知るチャンス!」


「な、なるほど……?」


「そーれーに、胡桃も知りたくない?
杏はまだしも、遥のほうは少なからず胡桃と距離をおいてたわけだし。かわいいって思われる理由も。知りたくない?」


「……知りたいです」

「桃華、なんだか愛の伝道師みたいだね」


「でしょ!?」


両手を腰にあてて、ふふふんと口端を持ち上げる桃華。


「遥のこと、もっと知って、とりあえず遥と前みたいに話せるようになろうよ。杏だって、また胡桃とごはん食べたりしたいもんね」


「うん。
遥も俺も胡桃をキライだとか、いやだとか思ったことないし、今もずっと大事な幼なじみだと思ってる。だから、昔みたいにまた仲良くしたい」


「杏……」


じんわりとあたたかいその言葉に、鼻の奥がツンとして泣きそうになったけれど。


杏はまた優しい顔で頭をなでてくれて。


桃華は「あたしがついてる!」と笑い飛ばしてくれた。
< 79 / 346 >

この作品をシェア

pagetop