その星、輝きません!
 「明日、午後東京に戻るので、午前中に予約入れられないでしょうか?」

 彼は平然と言った。
 私は、小さく呼吸をして気持ちを落ち着かせた。


「一条さん、さすがに三日連続は意味がないと思います。それに、お話させて頂く限り、カウンセリングの必要性があるとは思えません」


「カウンセリングが必要であるかは、依頼主の僕が決める事では?」

「いえ、本来なら、きちんと受診をして頂き、Drの指示で行って頂くものです」


「僕が、ホームページで確認したさいには、カウンセリングのみも実費で行うと載っていましたが、見間違いかな?」

 彼は、首を傾げた。

「それでも、三日連続はありえません。それに、私のような未熟な者では、一条さんのような立派な方のカウンセリングは出来かねます。もっと、腕のいいカウンセラーにご相談したほうが良いかと思います」

「では、あなたは身分や身なりで患者を選ぶと言う事ですか?」

 こうなってくると話がややこしい……

「そう思われたのなら仕方ありません」


 やはり、この辺りできちんとケジメを付けておかないと、後で面倒な事になるパターンかもしれない。


「分かりました。明日が最後と、お約束します。五分でも構わない」

「はい? 五分の為にわざわざお見えになるのですか?」

「ええ。それとも、あなたは僕と話をする事が嫌ですか?」

「そのような事を申し上げているのではありません。ご満足いただけるカウンセリングが出来兼ねると心配しているだけです」


「ご心配には及びません。あなたにご迷惑おかするような事はしないので」

 もう十分迷惑なんですけど……

 タブレットの画面で確認するが、本当に時間が取れそうにない。


「プログラムの前の、少しの時間でよろしいでしょうか?」

「ええ。大丈夫です」

「それでは、明日、九時半でいかがでしょうか?」


「分かりました」

 彼は席を立った。
 私も席を立つ。
 先に歩いて行く彼が、カウンセリングルームのドアの前で振り向いた。


「ご心配なく。ちゃんと料金はお支払いして帰りますから」

「……」


 この男、人の心が読めるのだろうか?

 あー嫌だ……

 これじゃ、どっちがカウンセリングされたのか分からない。いつものような冷静な判断が出来ない。なんか調子が狂う。

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