その星、輝きません!
「どうして?」

「結婚したいのなら、もっと御曹司に相応しいお家柄の方とかいるでしょ。それに御両親も納得されないと思いますけど……」


「親がどうのこうのって歳じゃないだろ? それに、御曹司でもないんだから、反対する人間もいないよ」


「御曹司じゃないの?!」

 ていうか、御曹司って? もっと若い奴の事を言うんしゃなのか?


 彼女の驚いた声が機内に響いた。


「父親は、長野で公務員。母は美容師。この会社は、俺が開業したんだ」


「えええぇ! 自分でこんな大きな会社にしたんですか? 凄い!」

「他に問題は?」

「あるわよ! 世間が認めないでしょ!」


「なんで、世間の許可がいるんだ?」

 次から次へと、よくまあ色々と考えらるものだ。


「落ち着いてよ~く考えてみて下さい。あなたは世界を動かす大企業の社長で大金持ち。わたしはしがないカウンセラー。だれが、どう見ても、私があなたのお金目当てで近づいたとしか思われないでしょ?」


「そんな事を誰が思うんだ? それに、そんな事は何の問題でもない」


「問題でしょ」



「落ち着いてよ~く考えろ。俺は確かに、世界を股にかけて大金を動かしている。でも、あんたは、人の心を動かしているじゃないか? 世間は、俺があんたに心を奪われたと思うかもしれないぞ」


「そういう事、言わないで下さい……」


「どうして? 」


「常識的な判断が出来なくなる……」


「じゃあ…… この二日間、楽しくなかったか?」

「それは…… でも、それとこれとは別です…… 無理な物は無理なんです」


 何が別なんだ? 一緒にいて楽しかったのなら良いじゃないか?

「さっきから無理、無理って何なんだ?」


「だって…… 私、バツイチだし……」

 彼女が下を向いて小さな声で言った。


「ああ、そんな事は知っている。気にする事じゃないだろ? 問題ない」


「問題だらけです。無理です」


 彼女がきっぱり言い切ると、飛行機のエンジン音が大きくなり着陸体制に入った。

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