その星、輝きません!
 空港から俺と彼女を乗せた飛行機が離陸し始めた。彼女は寂しそうに窓にへばりついて、遠くなっていく海を見ていた。


「また、来ればいいだろ?」

「ここが、どこだかも分からないのに、どうやってまた来るんですか?」

 よかれと思って言ったのに、彼女の不貞腐れた顔が現れた。


「へっ? 分かっていなかったいのか? あはははっ」


「笑い事じゃないですよ」


「また、俺と一緒に来ないか?」


 彼女は、じっと俺の目を見た。YESなのか? NOなのか?


「私を誰だと思っているんですか? 平民ですよ」


 彼女は真剣な顔で言った。


「俺も平民だと思うが…… だいたい、いつの時代の話だ」


「違う‼ あなたはどう見てもセレブでしょ! 私は平民の中でも下の方。こんな飛行機に乗って旅行なんて、一生ないかもしれない。はっきり言わしてもらいますけど、行動の桁が違うんです」


 行動の桁?よく分からない事を捲し立てる彼女の手を、そっと握った。

 彼女が驚いた顔をして、俺を見た。


「結婚しないか?」


 勢いあまって言ったわけではない。心の底から、彼女とまた来たいと思っただけだ。いや、ずっと一緒に居たいのだ。

「はい? 私?」

 彼女の間抜けな顔に、俺は何を間違ったのか考えた。


「俺の認識だと、手を握った相手に言うものだと思っているが…… それに、他には誰も居ないとおもうが……」


 一応飛行機の中を見渡してみた。


「そうだけど、私には無理よ」
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