失恋
「仕方ないことなんですよね。僕も頭ではわかっているんです。そうだ、五島さん、今日は仕事やめて、飲みましょう!」

 花田は声を明るくして言った。きっと無理してる。

「花田君仕事があるんじゃないの?」
「えっと、実は五島さんと二人になれそうだったから残ったんです」
「……そうなの?」
「二人でぱーっと飲んで嫌なことを忘れましょう!」

 私は複雑な気持ちになった。

「それで花田君は気が晴れるの?」
「っ。痛いところ付いてきますね。いいじゃないですか。晴れるかもしれない!」

 飲むのもいいかもしれない。お互い失恋同士。

「一人で飲むよりかはいいかもね。酔いつぶれたら置いて帰るから」
「五島さん冷たいですね」

 私たちは事務所を後にして、近くの焼き鳥屋にいった。

「僕はですね~、五島さんの一番になりたかったんですよ~」
「はいはい」
「でも、しばらくは無理そうなので、一番の友達になります~」
「先輩捕まえて友達ってどうなの?」
「いいじゃないですか~。なんでも相談にのりますよ~」
「こんな調子じゃ相談したくないわね」
「またまた~」

 つぶれるまでは飲んでいないものの、酔っ払った花田をタクシーにのせて、私は近くの地下鉄の駅まで歩いた。

 なるほど。酒を飲むと少し心が軽くなった。

 しばらくはこのままでいいと思えた。私が勝手に課長に横恋慕していてもいいじゃないか。迷惑さえかけなければ。

「でも不倫はもうこりごりね」

 小さくつぶやく。 

「次は生産的な恋をしよう」
 



 花田と私が恋人として付き合い始めるのはこの日から二年も先のことだ。
 

                                 了
< 7 / 7 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:6

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

MR(医薬情報担当者)だって恋します!

総文字数/47,392

恋愛(純愛)11ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
MR主要登場人物 ・鈴木 理緒…主人公。千薬製薬のMRになった。自己肯定感が低く頑張りすぎるところが。 ・佐藤 香澄…千薬製薬のMR。主人公の同期。 ・鈴木 司…アオハナ製薬の新人MR。理緒と同い年の同期。 ・夏目 聡子…クラウス社の先輩MR。 ・今野 悟…主人公の上司。 ドクター ・橘…呼吸器内科の講師。医局長。 ・沢野…循環器内科の講師。 ・谷口…腎臓内科の講師。医局長。 ・塩屋…呼吸器内科の講師。 ・竹部…呼吸器内科の医者。 親友 ・しろ(長谷部 史郎)…主人公の大学の時からの親友。 *MR…医薬情報担当者。病院の医師や薬剤師の方々に、「自社の薬に関する情報を提供」する。 *医局長…医局の業務を整理するために「医局長」と呼ばれる「医局担当教員」が置かれることが多く、一般に講師または助教が務める *オーベン…研修医の指導医。 ⭐︎エブリスタでPV24万以上、10000スター突破の人気作品を改稿してさらに読みやすく面白くしました。
運命

総文字数/16,554

恋愛(キケン・ダーク)32ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
「そなた、恋愛でうまくいっておるまい」  老婆の言葉に彩美はどきりとした。   第7回ベリーズカフェ短編小説コンテスト 「アナザーベリーズ」にて、特別賞に選んでいただきました。
ゆびきりげんまん

総文字数/33,731

恋愛(純愛)45ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
二歳年下の幼馴染、葵君。            年下の可愛い男の子だったのに。 手の届かないみんなの王子様になってしまった。 「僕、沙羅さんって呼びたいです」 葵君にとって私はまだ幼馴染ですか? 少しは特別ですか? フィギュアスケート界期待の星の美少年、あだ名は「王子」 羽田 葵 × 葵の幼馴染で二歳年上の元ピアニスト志望今は普通の女子高生 日向 沙羅               私は葵君とは住む世界が違う。 だから、この想いは……。 それでも、私はお姫様じゃないけど、あなたのそばにいたい。 葵君はまだあのゆびきりを覚えていますか? 「日向先輩の唇って柔らかいんですね」 「相合い傘ってなんだか秘密っぽくてよくないですか?」                 「沙羅さんはいつだって僕の支えなんだよ!」 ♡切ない切ない両片想い♡

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop