俺様パイロットは契約妻を容赦なく溺愛する【極上悪魔なスパダリシリーズ】

 ちょっぴり得意げに言うと、千里さんは一瞬目を丸くして「へえ」と頷いた。いつの間にかパイロットの顔になっていて、事故の詳細を話し始める。


「その事故で発生したセントエルモの火は、雷雲じゃなく火山の噴煙が原因だった。四基すべてのエンジンが停止する、ほぼありえない事態が起こったにもかかわらず、パイロットの冷静な判断と操縦で無事着陸した……すごい話だよ」
「恐ろしいですよね。いろいろ調べていると、飛行機に乗るのが怖くなります」
「なら、どうして調べるんだ?」


 片眉を上げる彼に怪訝そうに問いかけられ、私は思いを巡らせる。


「そうですね……これまでに起こった事故やインシデントは、今私たちが安全に空を飛ぶために全部必要なものだと思うから、かな」


 再び光った稲妻を眺めつつ答えると、千里さんの瞳がこちらに向けられた。

 重大なミスや事故はもちろん起きてはいけないけれど、それがあったからこそ教訓や反省を活かしてより安全な飛行ができる。無駄なものはひとつもない。

 そういえばと、比較的最近起こったインシデントを思い出す。
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