俺様パイロットは契約妻を容赦なく溺愛する【極上悪魔なスパダリシリーズ】

「一、二年前にも他社でありましたよね。大きな事故に繋がりかねないミスが起こってパイロットが非難されたけど、実際は部品の故障が原因だったインシデント。航空事故は複雑だから、たとえヒューマンエラーが絡んでいたとしても、よっぽど酷いミスでない限り私は誰も責められません。事故なんて起こしたくないのは皆同じだから」


 航空事故の原因は気象や自然現象だったり、誰も気づかないくらいの小さな機材の故障だったりと様々だ。一概になにが、誰が悪いとは断定できないものも多い。

 その原因究明ももちろん重要だけれど、私はアクシデントの中でも懸命に対処する人たちを心底応援したい。


「問題が起こったとき、最前線でその対処をするのはやっぱりパイロットで、そんな大きすぎる責任を負って業務にあたっている千里さんたちを本当に尊敬します」


 明るく微笑んで隣を見やると、私を見つめている澄んだ瞳と視線が絡まった。その瞳にいつもの力強さはなく、未熟な少年のような儚さを感じてドキリとする。
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