俺様パイロットは契約妻を容赦なく溺愛する【極上悪魔なスパダリシリーズ】

「それで私、結婚したから」


 雑談の延長の調子でさらりと伝えると、『え』とまぬけな声がしただけで、そのあとからなにも聞こえなくなった。突然すぎて理解できていないのだろう。


「もしもし、お父さん? もしもーし」
『けっ、こん……ケッコン……け、結婚!?』


 ぶつぶつと何回か繰り返したあと、すっとんきょうな声が響いた。ようやく異常事態だと認識したらしい。


『今、結婚〝した〟って言ったのか!? 過去形!?』
「そう、結婚しました。事後報告でごめんなさい」


 今になって決まりの悪さを抱きつつ謝る私に、父は情けない声を出して嘆いた。これで思い知っただろうか、自分の娘ももう自分で人生を切り開いていけるようになったのだと。

 絶望している様子が手に取るようにわかるので、とりあえず宥める。


『嘘だ……つぐみが人のものになるなんて……』
「お父さん。私も二十五だからさ、そろそろ」
『信じない、信じないぞ。父さんが認めた男ならまだしも、どこの馬の骨ともわからんヤツにつぐみの人生を任せられるわけが……!』
「ちょっとお母さんに変わってくれる?」


 まったく現実を受け止めようとしないので、私はあっさり諦めて母に助けを求めた。
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