違いませんが、 違います‼︎

4-1


これほどドキドキしながら出勤したのは、初日以来。

ゲートを通れなくなっているのではない。
ロッカーが使えないのではないか。
席がないのではないか。

緊張し過ぎて気持ちが悪い。


とりあえずゲートも通れたし、ロッカーも使えた。
席にも変化がなく、ホッと一息つく。

「坂本さん。おはよう」

斉藤さんの声に体がビクッとした。

「オハヨウゴザイマス」

申し訳なさ過ぎて、斉藤さんの顔が見れない。
声のトーンは悪くない。

でも、一旦上に上がってからの急降下に備えて身構える。

「昨日はお疲れ様でした。今急ぎの仕事なかったよね」
「アリナセン」
「では、今から葉山君の所に行って下さい」

渋々と立ち上がる。ごめんなさい。

全力を出して頑張ったつもりでしたが、ダメだったみたいです。


ここに居場所を作ってくれた斉藤さんにも、本当に良くしてくれた三枝さんにも南沢さんにも申し訳ないです。

でも、これが私の実力なのだと思います。大学に行ける頭もない私。

多くの会社が大卒を優先するのは、きっと私がどんなに頑張っても乗り切れない壁を彼らは簡単に乗り越えてしまう。
そういうところなんですかね。

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