悪役令嬢の涙。好きな人を守るのためならば、私は悪役でも構いません。

やっと気づいた優しさ

「私、ホントに心配して」

「悪役が心配しちゃダメでしょ」

「あ……」

 そう言われれば、確かにそうだ。悪いことをしていても、素で対応してしまっていたなんて。

 これは向いてないと言われても、本当に仕方ないことだろう。それも無自覚でやってしまっていたのだから。

「リーリエがティアのいじめに便乗して、誰かにいじめられていると知れば、君がやろうとしていることを諦めると思ったんだ。でも、ティアは諦めなかった。初め、何かの理由で俺とリーリエをくっつけようとしてるのだと思ったよ」

 それは半分は本当で、半分は違う。

 私は本当に二人が、私の分まで幸せになってくれればいいと思っていたから。

 それに今でも、それは思う。私なんかよりも、二人はずっとお似合いだ。なにもない、私なんかよりもずっと。

「だけど、あまりに必死なティアの様子はそれだけではないと思ったんだ。だから君の家に探りを入れた」

「カイル様、もしかして……叔父様たちのこと、知っていたのいたのですか?」

「ほんの少し前にね。でも、僕たちはとてもティアに腹が立ったんだ。どうして一言、言ってくれなかったんだい。どうしてそうやって、なんでも一人で抱え込もうとするんだい?」

「だって……言えば、迷惑がかかると……」

「それがダメなのよ。ティアにとって、わたしたちは何? そんなに、頼りなくてちっぽけな存在だったの?」

「ちがう、それは違うわ。誰よりも大切だったから」

「だったらなんで、わたしたちにとってもティアが大切だって思わないの?」

 そんなことまで、考えたことなかった。私にとって、二人はとても大事で……、でも2人にとっても、ちゃんと私が大事だったなんて。

 ずっと三人一緒だった。子どもの頃からずっと。私とカイル様が婚約をしたことで、この関係性がぎくしゃくしていると思っていたのはただの思い過ごしだったのかもしれない。

 リーリエにとっても、私が大切だった。その言葉が、胸の中のもやもやしたものを消していく。

 私はずっと二人が大切だったから。ずっと側にいて欲しい人たちだったから。

「ごめん……なさい……」

「ホントに、馬鹿ね。ティアは」

 リーリエはそう言いながら、涙をぽりぽろとこぼす。

 今ならリーリエの言葉を素直に受け止められる。大切な人たちに嘘を付いていたのだから。
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