2人なら…「推しと彼氏と彼女の関係」
ここでキスしてた事を、忘れてくれってこと?
それとも…滝沢君への想いを、忘れてくれってこと?

アリスさんはバックヤードに聞こえないように、声をひそめるが、鏡越しの目力には相当な力がこもっていた。

「あれは…軽率だったと思います…けど…」

「けど、何? 
それに…
さっき、コレ、トイレの洗面で拾ったの…。
桐島さんのでしょ。」

「あっ…それは…」

「どういうこと?」

「違うんです…これは、本当に誤解で、弟が…。
スゥが、恋愛成就と間違えて買っちゃたもので…」

アリスさんは、スタイリングチェアからの立ち上がると大きなため息と共にピンクのお守りを見つめた。

化粧直しをした時にポーチから落ちたのだと思う。

例の安産祈願の御守り。

「taiga君も困ってた…。
スゥ君、顔に傷作って富山から帰って来たって。
撮影あるのに…。
化粧で隠したり、加工したり…幾らでも出来るけど、自覚がなさ過ぎるって。」

そうです…よね。

「滝沢君だってそう…コンテスト前だっていうのに、右手に包帯って…。
だいたい彼らしくないっ。」

「………ごめんなさい…。」

「何で…?桐島さんが謝るの?意味分かんない…。

ごめん、桐島さん。また…あなたを引っ叩いてしまいそうになるっ!!

私が軽率でした…なんて言わないでよねっ!!」

アリスさんは、私の手に握らせようとした御守りを床へと投げつけた。
< 343 / 364 >

この作品をシェア

pagetop