魔術師と下僕

 ジオの手が動くと、その方向にイリヤも動く。心底気持ち悪いという表情のジオに、イリヤは少なからず傷ついた。

 その距離のまま、ジオとイリヤは一階へ移動した。そして、ジオはもう片方の手をかざして玄関を開ける。イリヤはそっと玄関の外に着地させられる。そして玄関が勢いよく閉められた。

 追い出された……と理解するまでに、数秒を要した。

 イリヤはすっかり困ってしまった。こんな姿で一体どうすればいいのだろうか。もしも戻る方法がなかったら? このままカエルとして生を全うするしかないのか。

 ジオなら戻る方法を知っているかも知れない、けれどどうやって自分がイリヤだと伝えればいいだろうーー。

 玄関が勢いよく開き、ものすごい形相のジオが出てきて早口で捲し立てた。


「まったく僕に黙ってどこかへ行くなんて下僕のくせに生意気! 用事があるなら言ってくれれば一緒に行くし! 迷子になったらどうするのさ!」

 ジオは当てがあるのかないのか、イリヤを探しに出かけるつもりらしかった。違うのだ、ここにいるのだ……。と、訴えたところで、また驚かせてしまうだけだろう。

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