魔術師と下僕

 昼休み。食堂に行けば、当然のようにナターリアもついてくる。


「わー、カレーと揚げ油の匂いしかしないっすねえ」と、ナターリアはカレーを注文した。人のカレーは羨ましいので、イリヤもカレーにする。


 イリヤは端っこの席にひとりで座っているブルーノを発見した。


「ナターリアさん、あの席に行ってもいいですか?」
「いいっすけど、イリヤさん変わってますね」
「そうですか?」
「そうっすよ。留年組にわざわざ絡みに行く人、あんまいないっすよ?」


 自身が変わっていることは棚の上にぶん投げて、ナターリアは言った。

 イリヤは特に気にすることなく、ブルーノに近づいて声をかける。


「あの、ここいいですか?」


 ブルーノはイリヤを一瞥したが、すぐに自分の食事に集中した。栄養補助ブロック、サラダ、菓子パン、ヨーグルト。サラダだけは食堂で頼んだらしい。

 イリヤはすごいメニューですねと言おうとして自重した。ナターリアが「すごいメニューですね」と言った。
< 48 / 168 >

この作品をシェア

pagetop