わがままシュガー


今日は一日、どことなく憂いているような、寂しそうで心ここにあらずというような瞳をしていた。

あの時の……入学式の時のような、佐藤の眼差し。



「それって誰にも頼まれたことじゃねぇの。叔父さんは俺のやりたいようにって自由にできるようにサポートしてくれてたし、蜜は眠ったままだし、両親もいない。俺が、俺の為に縛り付けてただけだったんだよな」



そう言って佐藤は、コーヒーを一気飲みして、私の方を向いた。



「のどかが、そんな俺に気付かせてくれた」



そう口端を上げて佐藤は私に顔を向けるけれど、私はそんな、何もしてなんてない。



「佐藤が自分で気付いたんでしょ。私は別になにも……」

「俺が俺に厳しいって、俺には友達作らないのかって聞いてくれたの、和香でしょ」

「それは……そう思ったから言っただけ」

「いいの。俺にはその言葉が嫌なほど響いたんだから」



ペットボトルを握っていた私の手の上から、佐藤の指先が重なる。

今度はなんだ、と気構えるけれど、佐藤は私をのぞき込むようにして、ふわりとした笑みを見せた。



「だから俺、ギャル卒業するわ」
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